おにぎり山ふもとの畑日記(9)
梅や、洋梨のような果樹をふくめて、木は、春が来る前に、余分な枝を切りおとしておかなくてはいけない。面倒なのは、切りおとした枝の始末。長さをそろえて切って、ひもで縛って、束にして、積んでおく。
単調で時間のかかる作業。たよりになる助っ人は、鉈(なた)。以前は、のこぎりや、枝切りばさみで、時間をかけて切っていた。実家からやってきた父が、見かねて、金物屋で買ってくれた。
つかい方は、かなり荒っぽい。でも、慣れれば、便利。細い枝を、数本まとめて一気に、ざっと、切り落としたり、太さ3、4センチくらいの枝であれば、斜めに数回、切り込みを入れるだけで、足で踏みつけて、折ることができる。
古風なかたちだが、振りおろしたときの、重さのバランスがよく、手になじむ。
鉈といえば、江戸時代の、円空の、鉈彫の仏像。鉈以外の道具も、つかったらしいけれど、疫病や、干ばつなどに苦しむ、貧しい人々の、求めにこたえて、気前よく彫りつづけた。木の切れ端(はし)があまれば、ちいさな仏像を、たくさんつくって、家でも拝めるようにしてくれた。切りたおした木の命を無駄にせず、世のためにもなる。すごい人だ。
円空も愛用した鉈。ぜひ、あなたも。AW (2020/02/19)
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